AIDSを含む医学研究にも利用されている Mathematica
- 数値計算—積分
- 記号計算—微分と積分,大規模な代数式の簡約,微分方程式の解
AIDSの治療法の探究をサポートするということは,この不可解な病気をできるだけ理解しようと莫大な努力を払うことです.まだ分からないことのひとつに「ある人が感染してからAIDSだと診断されるまでに一般にどのくらいの時間がかかるのか」というものがあります.この問いの答を求め,米国保健福祉省の疾病対策予防センター(Centers for Disease Control and Prevention)では Mathematica を使って死活に関わる計算を行っています.
数理統計学者のBob Byers氏は潜伏期間の推定に最も広く使われている確率分布であるワイブル分布がAIDS研究でこれまでに集められたデータの重要な特徴を示さないことに気付きました.「データはAIDSだと診断される確率が7年目付近でプラトー(一時的な停滞期)に入ることを示しているのに,ワイブルの『ハザード関数』ではそうならないのです」とByers氏は説明しています.
Byers氏によると,潜伏期間のより正確な推定ができるようになるといつになったらより強力な治療を始めるべきかの決定を助け,時には感染の時期を推定する上で患者にとっても医者にとっても非常に役に立ちます.AIDSが発症するまでの時間が分かると,医療提供システムがAIDSケースに与える影響を医療分析者や経済学者が予測する助けにもなります.
「私は Mathematica を使って『ハザード関数』がロジスティック分布に従うようにする微分方程式を解きました.この新たな分布はワイブル分布よりも観察によって得られたデータにはるかによくフィットします.Mathematica がなかったら,方程式を解くという退屈で時間がかかるタスクを手作業でしなければならなかったでしょう」とByers氏は言っています.